個人事業主のための建設業許可取得ガイド:条件・手続きとメリットとは?
- 亀田行政書士事務所
- 2024年11月6日
- 読了時間: 14分

▶︎1. 建設業許可とは?

1.1 建設業許可の基本
建設業許可とは、一定の規模を超える建設工事を受注・施工するために必要な国または都道府県からの許可です。この許可を得ることで、法的に認められた形で建設工事を行うことが可能になります。
具体的には、建築一式工事で請負金額が1,500万円以上、または延べ面積が150㎡以上の木造住宅工事、その他の建設工事で500万円以上の工事を受注する場合に許可が必要です。
許可には、知事許可と大臣許可の2種類があり、事業所の所在地に応じて取得する許可が異なります。知事許可は1つの都道府県内で事業を行う場合に必要で、大臣許可は複数の都道府県にまたがって事業を行う場合に必要です。
建設業許可を取得するためには、事業の信頼性や安全性を確保するためのいくつかの要件が設けられています。これには、経営業務の管理責任者や専任技術者の設置、財産的基礎の証明などが含まれます。これらの要件を満たし、適切な書類を提出することで、建設業許可を取得できます。
個人事業主も、一定の条件を満たすことでこの許可を取得することが可能です。特に、一人親方などの小規模事業者も取得することができ、許可を得ることで受注できる工事の幅を広げ、事業の成長につなげることができます。
このように、建設業許可は、建設業を営むための重要な法的ステップとなります。
1.2 個人事業主が建設業許可を取得する際の条件
個人事業主が建設業許可を取得するためには、法人と同様にいくつかの要件を満たす必要があります。主に以下の3つのポイントに焦点が当てられます。
経営業務の管理責任者の設置: 個人事業主自身が経営経験を持っている場合、事業主がこの役割を果たすことが多いです。具体的には、過去に5年以上の建設業経営の実務経験が必要とされます。この証明には、確定申告書や工事請負契約書などの書類を準備する必要があります。
専任技術者の確保: 許可を受けるためには、営業所に常駐する専任技術者が必要です。専任技術者になるためには、建設関連の資格(例:一級建築士、土木施工管理技士など)や、10年以上の実務経験を証明できることが条件です。
財産的基礎の証明: 個人事業主でも、許可を取得するためには、事業を遂行するための財産的基礎が求められます。具体的には、自己資本が500万円以上であることを示す決算書や、預金残高証明書などが必要です。
これらの要件をクリアし、必要な書類を適切に揃えることができれば、個人事業主でも問題なく建設業許可を取得できます。しかし、書類の準備や手続きには時間と労力がかかるため、専門家のサポートを受けることが推奨されます。
1.3 許可が必要な工事の種類
建設業許可が必要となる工事は、法律で定められた一定の規模以上の工事に該当します。具体的には、以下の基準を超える工事が対象です。
建築一式工事: 1件あたりの請負金額が1,500万円以上、または延べ面積が150㎡以上の木造住宅の工事が該当します。これらの条件を満たす工事を行うためには、必ず建設業許可が必要となります。
その他の工事: 建築一式工事以外の建設工事では、500万円以上の工事を請け負う場合に許可が必要です。これには、内装工事や電気工事、管工事などが含まれます。この基準を超える金額の工事は「軽微な工事」とは見なされず、無許可での請負は法律違反となります。
軽微な工事: 上記の基準を下回る、いわゆる「軽微な工事」については、建設業許可を取得せずに請け負うことが可能です。たとえば、小規模なリフォームや修繕工事などがこれに該当しますが、長期的に事業を拡大する場合、早めに建設業許可を取得しておくことが望ましいとされています。
このように、個人事業主が建設業許可を取得するかどうかは、請け負う工事の種類や規模に大きく依存します。許可が必要な工事を無許可で行った場合、罰則が科される可能性があるため、適切な手続きが重要です。
▶︎2. 個人事業主が建設業許可を取得するメリット

2.1 受注できる工事の拡大
個人事業主が建設業許可を取得する最大のメリットの一つは、受注できる工事の範囲が広がることです。建設業許可を取得することで、1,500万円以上の建築工事や、500万円以上のその他の工事を合法的に請け負うことが可能になります。これにより、事業規模を拡大し、より大きなプロジェクトへの参入ができるようになります。
特に一人親方や小規模な個人事業主にとっては、軽微な工事しか請け負えない状況から脱し、経済的にも安定した事業を展開できるようになります。許可があることで、公共工事や大手企業からの発注など、信用力の高い仕事も受注できるため、競争力の強化にもつながります。
2.2 信用度の向上
個人事業主が建設業許可を取得することで、取引先や顧客からの信用度が大幅に向上します。建設業許可を持っていることは、法律に基づいて事業を行う能力があると認められる証拠であり、取引先からの信頼を得るための重要な要素です。許可の有無が判断基準となることも多く、特に公共工事や大手企業との取引では、許可の有無が大きな影響を与えることがあります。
さらに、許可を取得することで、「軽微な工事」の枠を超えた高額な案件にも対応できるため、顧客のニーズに幅広く応えられるようになります。これにより、新規顧客の獲得や長期的な取引関係の構築が可能になり、事業の拡大にもつながります。
2.3 個人事業主の社会保険や税制上の利点
個人事業主が建設業許可を取得することで、社会保険や税制面での利点も享受できます。まず、建設業許可を持つことで、事業が安定し規模が拡大する可能性が高まり、従業員を雇用する場合に社会保険への加入も必要になります。
個人事業主は、従業員が5人未満の場合には社会保険の加入が任意となるため、コストを抑えつつ事業運営ができるのも一つの利点です。
また、法人ではないため法人税の均等割などの負担がなく、個人事業主としての税制上のメリットを活かすことができます。特に、事業が小規模であれば、許可取得後もこれらのメリットを享受しつつ、税負担を軽減することが可能です。
▶︎3. 個人事業主が満たすべき建設業許可の取得要件

3.1 経営業務の管理責任者の要件
個人事業主が建設業許可を取得する際、最も重要な要件の一つが経営業務の管理責任者を設置することです。この役割は、建設業の経営を総合的に管理できる能力を証明するものであり、個人事業主の場合は事業主自身がこの役割を担うケースがほとんどです。
経営業務の管理責任者となるためには、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。
5年以上の建設業における経営業務の実務経験
経営業務の管理責任者に準ずる地位で、6年以上補助業務を行った経験
証明するためには、確定申告書や工事請負契約書など、過去の実績を示す書類が必要です。
特に、個人事業主として5年以上の実績を証明できることが鍵となります。
この要件を満たさない場合は、建設業許可を取得することができないため、十分な準備と証明が求められます。
3.2 専任技術者の要件
建設業許可を取得するためには、専任技術者を営業所に配置することが必須です。専任技術者は、工事の適切な遂行を保証するための役割を担う人物で、工事現場ごとに技術的な責任を負います。個人事業主の場合、事業主自身が専任技術者を兼任することも可能ですが、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
国家資格の保有:一級建築士や一級建築施工管理技士など、建設関連の国家資格を持っていることが条件です。この場合、資格証明書を提出するだけで専任技術者としての要件を満たすことができます。
実務経験の証明:資格を持っていない場合、10年以上の実務経験が必要です。この場合、工事請負契約書や注文書、請求書などでその実務経験を証明する必要があります。学歴によっては、必要な実務経験年数が短縮される場合もあります。
特定の学科の卒業:建設関連の学科を卒業している場合、実務経験が3~5年で要件を満たすことができることがあります。
専任技術者の要件を満たさなければ、建設業許可を取得することができないため、資格や実務経験の証明書類を確実に揃えることが重要です。
3.3 財産的基礎と信用力
個人事業主が建設業許可を取得するためには、事業を適切に遂行できる財産的基礎や信用力を証明することも必要です。この要件は、事業主が経済的に安定していることを示し、工事を受注した際に適切に対応できる能力があるかどうかを判断するために求められます。主な基準は以下の通りです。
自己資本が500万円以上:個人事業主の場合、直近の決算において、自己資本が500万円以上あることが求められます。これは、事業を遂行するための最低限の資本力を示すための要件です。自己資本の証明として、決算書や財務諸表を提出する必要があります。
預金残高証明書:自己資本を直接証明できない場合、金融機関が発行する500万円以上の預金残高証明書を提出することで、必要な資本を確保していることを証明できます。この証明書は、申請の直前4週間以内に発行されたものである必要があります。
継続的な営業実績:許可取得直前の過去5年間にわたって、許可を受けて継続的に営業している実績がある場合、この実績が財産的基礎の一部として認められることがあります。
財産的基礎を証明する書類が揃わない場合、許可を取得するのが難しくなるため、計画的に準備を進めることが重要です。
▶︎4. 個人事業主の建設業許可取得手続き
4.1 必要書類とその準備
個人事業主が建設業許可を取得するためには、いくつかの重要な書類を準備する必要があります。これらの書類は、事業主の経営経験や技術的能力、財務的安定性を証明するものであり、正確に揃えることが求められます。主な必要書類は以下の通りです。
経営業務の管理責任者に関する書類: 個人事業主が自身で経営業務の管理責任者となる場合、5年以上の経営経験を証明する書類が必要です。具体的には、確定申告書の控えや、工事請負契約書、請求書などが挙げられます。
専任技術者に関する書類: 専任技術者の要件を満たすためには、国家資格の証明書や、10年以上の実務経験を証明する書類(契約書、注文書、請求書など)が必要です。また、学歴が要件を満たす場合は、卒業証明書も必要となります。
財産的基礎に関する書類: 500万円以上の自己資本を証明するための決算書や、預金残高証明書が求められます。これらは、事業の安定性を示すための重要な書類です。
誠実性や欠格要件に関する書類: 個人事業主が過去5年間に法令違反を犯していないことを証明するための書類も必要です。これは、誠実性を担保するための要件であり、法律に基づいた事業運営ができるかどうかを確認するために求められます。
書類の不備や不足があると、許可の審査が遅れる可能性があるため、提出前にすべての書類が揃っているか確認することが重要です。
4.2 申請手数料と審査期間
個人事業主が建設業許可を申請する際には、手数料や審査期間を考慮する必要があります。これらの費用や期間は、知事許可か大臣許可かによって異なりますが、一般的には以下のようになります。
申請手数料
知事許可の場合:新規申請の手数料は9万円です。
大臣許可の場合:新規申請の手数料は15万円となります。これに加えて、業種追加や更新を行う場合には別途費用が発生し、業種追加の場合は5万円、更新申請も同額の5万円が必要です。
審査期間
知事許可の審査期間は、通常30~45日程度です。地域によってはこれ以上の期間がかかる場合もありますが、一般的に1~1.5か月程度で許可が下ります。
大臣許可の場合、審査には90~120日ほどかかるため、余裕を持った計画が必要です。
審査期間は、申請書類の正確さや不備によって変動することがあります。不足や不備があると審査が遅れる可能性があるため、提出前の書類確認は慎重に行うべきです。また、許可が下りるまでの期間は、建設業の規模や地域の審査体制にも影響されることがあります。
4.3 よくある申請時の課題と解決策
個人事業主が建設業許可を申請する際、いくつかの共通の課題が発生することが多いです。これらの課題に対処し、スムーズに許可を取得するためには、事前の準備と対策が非常に重要です。以下に、代表的な課題とその解決策を紹介します。
書類の不備や不足: 許可申請には多くの書類が必要ですが、不備や書類の不足が原因で申請が遅れるケースが多く見られます。特に、経営業務の管理責任者や専任技術者の証明書類が揃わない場合、申請が受理されないことがあります。解決策:申請前に必ずすべての書類を正確に揃えることが重要です。必要書類リストをチェックし、各書類が最新のものであるか、正しい形式であるかを確認します。可能であれば、行政書士などの専門家に依頼し、事前に書類のチェックをしてもらうことを推奨します。
実務経験や経営経験の証明: 経営業務の管理責任者や専任技術者としての実務経験を証明するための書類(確定申告書、工事請負契約書など)が揃わない場合、申請が遅れることがあります。解決策:実務経験の証明書類が不十分な場合、過去の取引先から再発行を依頼するか、必要に応じて過去の取引に関連する補足書類を用意します。また、早い段階で必要書類の確認を行い、足りない書類がないか確認することが重要です。
財産的基礎の証明が困難: 自己資本や預金残高の証明が不十分な場合、審査で問題になることがあります。個人事業主にとって、資金力の証明が不足していると、許可取得が困難になることがあります。解決策:自己資本を証明するための決算書や預金残高証明書をしっかりと用意し、不足がないか確認します。自己資本が足りない場合は、資金調達を事前に計画し、審査を受けるための基準をクリアするよう調整することが必要です。
これらの課題に対処することで、建設業許可の取得プロセスがスムーズに進み、申請の遅延や失敗を防ぐことができます。
▶︎5. 個人事業主が建設業許可を取得しないリスク
5.1 無許可営業の罰則
個人事業主が建設業許可を取得せずに営業を行った場合、法律に基づいて厳しい罰則が科される可能性があります。建設業法では、一定の規模以上の工事を無許可で請け負うことは違法とされており、これに違反した場合には6か月以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります。
特に、請負金額が許可基準を超える工事を継続的に行っていると、行政指導や罰則の対象となることが多く、事業の信用を失うだけでなく、事業停止の命令が出されることもあります。これにより、事業の存続が危ぶまれることになります。
無許可営業を続けるリスクは、事業全体の信頼を大きく損なうため、許可の取得は早急に行うべき重要なステップです。
5.2 信頼と事業成長への影響
個人事業主が建設業許可を取得しない場合、罰則だけでなく、事業の信頼性や成長にも大きな影響が出ます。許可を取得していないことが取引先に知られると、信頼性が低下し、特に大規模な工事を請け負いたい場合や、取引相手として大手企業や公共事業をターゲットにしている場合には、大きな障害となります。
建設業許可は、事業者としての適正な運営と技術的な能力を証明する重要な資格です。このため、許可を持たない事業者は、許可を持つ競合他社に比べて取引機会が減少し、事業の成長が停滞する可能性があります。また、許可を取得することで受注できる大規模工事に参入できるため、長期的な事業拡大を目指す上でも不可欠です。
事業の信用を保ち、成長させるためにも、建設業許可を取得して正規の手続きを踏むことが、個人事業主にとって重要な選択となります。
▶︎6. まとめ
個人事業主が建設業許可を取得することは、事業の信頼性を高め、さらなる事業拡大を実現するために欠かせない要素です。
許可を取得することで、受注できる工事の規模が拡大し、特に1,500万円以上の建築工事や500万円以上のその他の工事を合法的に請け負うことが可能になります。また、許可の有無は取引先の信頼度を左右する重要なポイントであり、特に公共工事や大手企業との取引では不可欠です。
一方、建設業許可の取得には、経営業務の管理責任者や専任技術者の要件を満たすこと、そして財産的基礎を証明する必要があります。これらの要件は、事業主の経営経験や技術的能力、そして事業の財政的健全性を証明するために不可欠です。書類の準備や要件の確認には時間と手間がかかりますが、これをクリアすることで大きな事業機会が得られます。
許可を取得しないまま大規模工事を請け負うと、無許可営業として罰則が科されるリスクがあり、事業の信頼や成長にも悪影響を与えます。したがって、事業の拡大を目指す個人事業主にとって、建設業許可を取得することは重要なステップです。
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